『「働き方」の教科書』:僕らが思っているほど、人生で「チャンス」はそんなに訪れない
ライフネット生命CEO・出口さんの『「働き方」の教科書』という本を読みました。
この方の本ではその他に『本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法』も好きで、読む前から期待していたのですが、そのハードルを軽々超えてきますね。端的に言って、いま20代前半で働きはじめた僕にとってすごくいい本でした。
「働き方」の教科書:「無敵の50代」になるための仕事と人生の基本 | ||||
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『本の「使い方」』はこちらで書評を書いているので、こちらも併せて読んでみてください。
「働き方」のスタンスに共感できる
出口さんは現在67歳で還暦を超えていらしゃる方で、僕の親世代よりも年上の方。それくらいの世代に対するイメージとしては、ぶっちゃけ「プライベートを犠牲にしてでも若いうちはとにかく働け」といった仕事至上主義の方が多いんだろうなぁと思っていました。青田買い・終身雇用・年功序列制・定年制みたいなものが当たり前だった世代にとっては、それは一種の生存戦略みたいなものなので無理もないかと思います。
けれど、出口さんは全然そうじゃないんですね。むしろ、真逆。例えばこの辺りの話とか。
「デートと残業とどちらが大事なんだ」そんな言葉で上司に怒られたことのある人もいるでしょう。僕に言わせれば100パーセント、デートに決まっています。比較するのもおこがましい。何も早く結婚して一緒に住めと言っているわけではありません。極論すれば形態はどうでもいいと思います。人生にとって重要な七割の時間をともに過ごすパートナーや友人は、人生にとってかけがえのないものであるという事実を確認してほしいのです。
要は、「仕事なんて、人生にとって3割の時間しか割かないのだから、ぶっちゃけそれ以外のことと比べるとどうでもいいよね」っていうスタンスをとっているんですよね。これって、めちゃくちゃ今っぽくないですか?
僕はこの感覚は大賛成です。個人的に、仕事は「どうでもいいもの」であり「できればしたくないこと」かつ「まぁでも、どうせやらないと死んじゃうんだから、せっかくなら楽しくやりたいよね」と思いながら普段生きているので、出口さんの仕事観にはドンズバで共感できるんですよね。
この本ではそれを踏まえたうえで、「じゃあ、その3割の仕事人生をどのように豊かなものにしていくか」が書かれてあります。極端な嫌・仕事論に振っているわけでなく、とてもフラットな視点でグサグサと展開されていくため説得力がスゴいんですね。経験ってこうやって活きてくるんだな…と、出口さんの文章を読んで思い知らされます。
自分に与えられた仕事が、課や部や企業全体の仕事のどの部分に当たるのか。そうしたことをよく考える必要があると思います。しっかりと仕事の目的や位置づけを理解していれば、自分なりの応用を利かせることもでき、つまらない仕事を楽しい仕事に変えることもできます。考えながら仕事に取り組むことで、仕事の能力は加速度的に上がっていくはずです。
こういう、ベーシックな仕事に対する姿勢もしっかりと書かれており、「働くってどういうことなんだろう?」と悩む若い人たちにはとても参考になるはず。
人生における「チャンス」はそんなに多くない
僕が本書で特に気になったのは「チャンス」に対する考え方です。
チャンスは何度でも訪れるという考え方は、理屈のうえだけの世界です。現実の人生では、人間にはそれほど多くのチャンスが与えられているわけではありません。むしろ、ほとんどが「一期一会」なのです。僕が人生を「悔いなし」と表現するのは、思ったときにやっておかなければ、次のチャンスが来るとは限らないからです。
特に若い頃って、「チャンスはいくらでも転がっている」と思いがちじゃないですか。僕は実家にいたころ、よく父に「ティッシュもタダじゃねぇんだぞ」と叱られていました。そう、チャンスはティッシュと同じで数限りあるものなんですよ。使いきったらなくなるし、それは常に自覚していなきゃいけないことなんです。
出口さんはこの「チャンス」の考え方について、「チャンスはそのほとんどが一期一会で、そんなに多く訪れるものではない」ということを、ご自身が旅行中に体験したエピソードを元に説明しています。
正直、これを読むまではそんなこと考えもしていませんでした。たぶん、目の前に絶妙なボールが転がってきても「今はまだそのときじゃない」とか「ちょっと調子が悪いから」という理由で取りに行こうとしないことも多かったと思います。
けれど、これを読んでからは「チャンスは有限」ということをはっきり意識するようになりました。
具体的にいうと、「誘われた飲み会(食事会)には基本的に行く(これは出口さんが実践されているようなので、パクリました)」とか「やったことがない仕事があれば、とりあえずやってみる」とかそんな感じの。
これに関していえばプライベートも仕事も関係ありません。「もう二度とこれをやる機会はないかも」と思うことが大事なんだと思います。
いま、後悔していること
だから、僕はいま猛烈に後悔していることがあります。
昨年、沖縄に行ったときのことです。
初日にA&Wという沖縄県のローカルハンバーガーチェーン店に行ったんですね。そのとき、事前に知り合いや先輩からあれほど「あれは一度飲んでおくべきだ」と言われていた、「ルートビア」を飲まなかったんです。そのときはめちゃくちゃコーラが飲みたくて…。
でも、もしかしたらもう二度と沖縄には行けないかもしれないし、何らかの事情でルートビアを飲むチャンスは巡ってこないかもしれない。
そういうことがもう二度とないよう、「チャンスは限りあるものだ」ということに自覚的でいたいものです。
text by shimotsu