【レビュー】東京03 第5回単独ライブDVD『傘買って雨上がる』感想

東京03の単独ライブDVDシリーズ、今回観たのは第5回の『傘買って雨上がる』という作品。前回は第7回の『スモール』。特に観る順番は気にしておらず、気になったもの、目がついたものから手当たり次第観ていっています。

この作品のリリースは2007年9月。東京03が結成してから4年で、いまから9年前の作品ということになります。映像を見れば分かるのですが、まずなんといっても3人ともめちゃくちゃ若い。今でこそ垢抜けた感じの風貌になってしまっておりますが、この頃は「ザ・若手芸人」という雰囲気をまとっていますね。あとは、とにかく華がなくてモテなさそうというイメージ。これはいまでもある意味一貫している部分ではありますが、この頃からそうだったんだと再認識できる映像に仕上がっています。

ひとつの作品として”未熟さ”を感じる

第5回目の単独ライブということで、まだ回数を重ねていないせいか、それ以降のライブよりすこし「未熟さ」のようなものを感じました。ひとつひとつのネタの完成度がイマイチというか、完成度が低いということでは決してありません。逆に言うと、個々のネタについては以降のライブより際立って面白いものも多いとさえ感じます。

けれど、どことなく「統一感」みたいなものを感じなかったんですよね。例えば、第7回の『スモール』という作品では、ライブ全体を通して「小さい人間像」を描いて、誇張し笑いに昇華しています。ところがこの、『傘買って雨上がる』では、全体を通したテーマ性をあまり受け取ることができなかった。そもそも『傘買って雨上がる』という時点で察しがつきますが、この時点では「各ネタに通底するテーマをタイトルに取り上げよう」という発想はなかったんじゃないかと思います。

ちょっと「未熟」と言ってしまうのは語弊があるかもしれないですけど、それ以降のライブとの違いとしてはっきり出ているのがその部分だったので、なんとなく気になってしまいました。

ベストは「スマイルハウジング」

いや、ホントにこの回はおもしろいネタが多いんですよ。あの有名な「バンドマン」のネタもこの回ですし、最後の『妹』もよくできていておもしろい。けど、その中で個人的にいちばん好きなのが『スマイルハウジング』というネタです。

不不動産屋が舞台のネタなのですが、店員役の角田がもうひたすらにしつこい。そのしつこさに客として来ていた飯塚が次第にイライラしはじめ、それに付随して先輩である豊本がキレる、という構図です。

これは推測なのですが、おそらく3人のうちのだれかが角田演じる「カッコつける店員」とリアルに接したことがあるんじゃないかなぁと。それくらい、設定的には自然だし、日常の延長線上として普通にありえそうなネタだと思うんですよねぇ。これ、不動産屋だからわかりやすく「いやいや、ありえないでしょ」って思えますが、それ以外の職業ならネタにならないくらいありえそうな光景なんじゃないでしょうか。

このネタの素晴らしいところは、メインストリームとしての構成がおもしろいのはもちろんのこと、小ネタもおもしろいんですよ。角田の挙動とか、豊本のキレ具合とか。いろんなレイヤーの笑いが散りばめられていて、観ていてずっと飽きないネタなんです。